裾野の仕事場から帰り途にギターリペアーを頼みに行った。仕事場はスレートの屋根と壁のごく粗末な倉庫のようなところ。だが初夏の夕方歩くというのは気分が良いものだ。
ギターリペアーの工房は山の迫る崖下の洞穴にある。洞穴の手前には農家が何軒かあり、農家への入り口のY字路はまだ舗装されていなくて土のたおやかな路面がうねっている。
Y字路のところに美人のNが立っていた。会社の帰りだという。ぼくは楽器の修理に行くところだと言うと、「じゃあ、またね」と帰って行ってしまった。それじゃつまんない。Y字路の逆の山道はつづら折りになっている。途中には温泉施設もあることだ。
急いで戻ってくれば間に合うかも知れないと思って、工房に急いだ。
その場で修理してもらい、ギターを持ってNの行った山道を追いかけたら案外すぐに追いついた。学校のプールの裏手、金網沿いの道で「修理して貰ったんだよ」と言ってソフトケースからエレキを取り出すと、ネックが裏向きに取り付けてあった。
そしてとてもむしゃくしゃした気分になったのだった。
崖のみどりはひと雨ごと、日ごと、夜ごと勢いを増していて、もうわっさわっさです。
先日も書いたただのパチンコ打つ用のY字の棒のようだったやつもわっさわっさです。フキノトウだったやつも立派なよだれ掛けのような形になってわっさわっさです。
こんな時に歌いたい「ワッサワッサ・ブルース」。誰か作ってチョンマゲ。