今朝、引っ越してきてから始めてのまとまった雨。ひさしのない家なので落ちてきた水滴がまるまる窓にしたたる。これは汚れるぞ。家のかっこはいいかもしれんけれど機能的にはどうなんだろう?
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先だって砂浜から拾ってきた巻き貝。螺旋の柄が美しくて気に入っている。けれども、その渦巻きの裏側の真ん中から砂が落ちる。片づけるところもなくて机の上に置きっぱなしにしているのだが、気がつくと砂が出ている。
一度出し切ってしまえば、と思って振ったり小突いたりしたが、愛想で二三粒落ちた程度だった。けれど知らぬうちにまた砂を吐き出している。そういえば貝を持ってきてからどうも匂う。海臭い。海の近くだから海臭いのかと思っていたが、外に出ても潮の匂いはしない。
拾ってきた巻き貝が潮風と砂を吐き出し続けている。どうしよう?
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一昨日の晩、浜を歩いた。国道134号線の灯りは飛行機から見たイタリアの街灯ふうのオレンジ色で好もしい。その灯りが横から薄明るく崩れる波を浮かび上がらせている。
アベックや釣りや犬の散歩やジョギングの人などいるかと思ったら誰もいない。闇の中を波が打ち寄せる音がどんどん大きくなってぼくを飲み込もうとする。歩く向きを意識していないと、ついつい海に向かってしまいそうになる。顔を上げるとロールしながら崩れる波頭が、ハロウィンのカボチャの照らされた意地悪な目つきや歯の尖った口に見える。
「おっとっと」
足下を確かめながらそれでも砂浜を歩いていく。視界の端に動くもの。顔を上げてみると、寄せる波引く波をからかうように大きめの卵が遊んでいる。数は四〇個ぐらい。群れになってくるくる回り、ダンスしながら渚を滑っている。
気がついて足を止めると何か小さな声でコチョコチョ話し合った。そして波の寄せるのと引くのとに合わせて、すぅっと闇の中へ消えてしまった。それは走っているようにも飛んでいるようにも転がっているようにも見えたが、やっぱり滑っていたように思う。