自 転 車 と ト タ ン 横 丁 午 後 の 春
裏の露地をときどき客がやってくる。春風を通そうと網戸にしていたところから見合ったうちの猫と吠え合いになる。うちのは基本が家猫なので、ケンカになれていない。血圧が猛烈に上がり、呼吸困難なほど興奮してしまう。
先週の金曜日は少し余裕が出来たのでビデオを返しがてら自転車で散歩。風が強くてガタガタ、バリバリ。トタンの壁は恐いです。ここは下町、金杉横丁。
金属泥簿が流行中ですが、この家などは銅板葺き(と、思ったらやっぱりトタンに緑青色のペンキ。そりゃそうだ。)。金属の中でも銅は昔から割に高値でした。とても良い感じで緑青色になっています。でも、雷が落ちやすそうだと思いませんか?
呆れたことに国立博物館の屋根は、この緑青色に似た色のペンキが塗ってあります。国の大事な建物を、禿げ隠しの黒い粉末と同じような事でごまかしてる。そう思うと寂しいよね。国の中の文化の位置というのが推し量られるというものです。がっかりです。
よく行くラーメン屋の近所の自転車屋。左側面には「ホンダドリームベンリイカブ」と書いてあります。いつの時代やねん?
時を越えて存在する昭和ロマン。人は入れ替わっても、建物や街角が古いまま残っていれば、懐かしい人や物事を思い出すことが出来る。これを開発しちゃうと、痕跡も残らない。道の流れも変わるし、だ〜れもなんにも思い出せなくなる。思い出の無い人は、薄情になりやすいような気がする。
こういうオンボロにも住み続けて生活し続けている人に感謝いたしやんす。
久しぶりに太陽の沈むところに出くわした。本当にビルの隙間に落ちてゆく。いい感じに雲がかかっている。なんとなく「ト」の字形のテトリスを填めて、ビル建築群を二列分ぐらい消すことが出来たら…などと考えてみる。
もう一枚隅田川の夕景。墨田区側から浅草駅方面を望む。この桜のつぼみが開いて、人を呼ぶのだろう。なんとなく北斎版画の夕焼けぼかしを真似たような光りの具合だったけれども、モニターの具合でちゃんと見えるだろうか?sRGBってなんだか扱いづらい。
結局、浅草寺境内までやって来た。提灯の上に半月が寝ころんでいる。広角レンズしか持ってこなかったので月がちっちゃい。
五重塔の上に出ている月を、一眼レフで撮影していたガイジンのお兄さん。後ろからおじさんが唐突に声をかける。
「No! No!ナントカカントカ」びっくりした青年。でもすぐにふたりで英語で笑顔で話し始める。
ぼくにはわからん。英語じまんの近所のおっちゃんだろうか。下町の国際交流はこんなふうに始まるのだろう。金髪のおねえさんにも声をかけるのかな?そういうのいいなあ。ぼくも英語…いやドイツ語……いやロシア語やろうかな?