10/22
08:30 脇野沢民宿(16571)
暗い中飛び込みで宿を頼んだ脇野沢の民宿、写真も無ければ名前も覚えていない。どうせそんなに軒数はないだろうと、インターネットであたってみたら民宿が4軒。そのどれもが新建材の外壁でまったく姿が違っていた。というわけでどこだか見当もつかない。
民宿を出て一路恐山へ。
旅立ちから雨は鬱陶しい。カッパを着て冷たい雨の中を下北半島の深い山の奥へ走った。マスクをしていると、吐息がヘルメットの中に流れてシールドを曇らせる。肩から下が勝手に寒さでガクガク震える。タンクを挟む太ももの力が甘くなり、いかにも滑りやすそうな舗装路をノロノロ進んだ。
このマップでは、左下が脇野沢、右上が恐山のある宇曽利湖。陸奥湾沿いの国道338号線を大湊というあたりまで行って山中に分け入った。脇野沢から仏ヶ浦は恐山と逆方向なので、雨で条件の悪いこの日はあきらめた。
10:00〜11:00 恐山(16623)
たしかこの建物がいたこ部屋。初夏の大祭の頃に、いたこさんが詰めているようだ。
恐山温泉。割と大きい木造の湯船がある建物。硫黄のよい(?)香り。雨で湯冷めしそうだったので入浴せず。子供の頃、ここに亡くなった人が入浴しているつのだじろうのマンガを読んで、恐ろしさに震えたものだが、覗いてみると明るくていい感じの桧風呂だった。
傘を持っていないわれわれは、白い合羽にヘルメット着用でうろついていた。怪しい連中に思われたかも知れない。どこからともなくご詠歌が聞こえてきたときは、寺山修司の世界になった。というか寺山修司がこの情景を再構築して表現しているのだが。
霊魂うんぬんはよくわからないけれども、失われたもの、消息不明の子供、不在、喪失、そうした負の感覚に対する東北の人々の眼差しに包まれている感じだった。
恐山を下りて、再び陸奥湾沿いの道をむつ市から野辺地へと走った。
下北半島の首にあたる部分、陸奥湾から吹きつける風が強烈で、吹き飛ばされるかと思いきや、吸い込まれそうになったり。これまでで最も強い風だったように思う。
野辺地から国道4号線を南下、七戸町で394号線を八甲田の方に向かった。最近豪雪で名を馳せている酸ヶ湯温泉は八甲田の西にあり、今日目的の谷地温泉は南東側にある。近づくにつれて雪めいてきた。みちのくの10月下旬。寒すぎる。国道から谷地温泉へ枝分かれした細いダートにはいって雪が舞いはじめみるみるうちに勢いを増してきた。
ううう早く着け〜〜。へっぴり腰で走る。未舗装路の行き止まりが谷地温泉。砂利の上は多少雪が積もっても、舗装路の圧雪のようになって残らないので、道の凍結については少し気が楽だった。
到着すると、気の良さそうな山男っぽい主人と大きめの犬が出迎えてくれた。
16:15 谷地温泉(16755)この日の走行184km。案外走った。
N氏がバイクを覆うカバーを持っていたので、ぼくも真似して持ってきた。毎日、バイクを停めた後はきちんと掛けていた。この日なぜかN氏は掛けてない。濡れたバイクを乾かしたかったのかな?
荷物を部屋に運んでから見ると完全に本降りの雪景色。あっという間に山盛り積もっていた。
木造の質素な宿。薄暗くあたたかい廊下を管理人のような感じでワンちゃんが行ったり来たりしていた。
主人が「この頃あまり温泉の温度が上がらない。時々34°(だったかな?)くらいになるけど」といっていた。
「むむむむ、それって体温より低い???」
常連のお客さんに「今日はどうですか?」と聞くと「今日はぬるいほうだよ。」と、相づちついでに笑っていた。つられてぼくも笑った。そのお風呂は最高。
木の衝立で仕切られた浴場の小振りな湯船、下からプクプク沸いている。どちらもやっぱりぬるかった。
多分体温かそれ以下。最初に入ったときに「冷たい!」と思ったほど。冷泉ほどじゃないけど。1時間近く入ったけれども温まらなかった。なのに寒くならない不思議な感覚だったように思う。