七月の或る日、ギター師匠の宅にてレスポールのヒビの見せ合いッこをしてきた。
といいますか、中古で買ったアンプの出音が前々からおかしいと思っていて、K師匠が「真空管のテスターを持っているから見てやる」と親切に言ってくれるので見せにいってきた。片道約130kmあった。
東京都内はあいかわらずバカみたいに混んでいて、ところどころで事故やら故障車やら渋滞につぐ渋滞。毎日同じ人が事故をしているのではない。毎日違う人が故障している(多分)のだから、恨み言も言えない。クルマでエアコンは使わないほうだけれどもコンクリートのジャングル、そよとも涼しい風が抜けないのでさすがにつけた。
高架の道路をノロノロと行く。ビルまたビル。ビルビルビル。高いビル低いビル。みんな空調の効いた室内で働いている。オシャレランチを食べたりセクハラしたりツイッターしたりいじめられたりプレゼンしたりファックスしたり。快適なモダンなビルの室内に縁の無かったぼくは東京を追い出されて海の近くに移り住んだ。今のところそう悪くない。住んでいた下町の思い出も悪くない。
ぼくのデラックスリバーブII。電子基盤で堅苦しくできているのかと思っていたら、ポイント・ツー・ポイントで丁寧に作ってあった。はじめて開けて見た中。びっくり。
2本の6V6真空管(のバイアス?)を測って貰ったらマッチしてなかった。のみならず尋常でない電流が流れていた。調整して少なくしないとマッチドペアの真空管に交換してもまた乱れてしまうだろう、ということで元に戻した。
次の日にインターネットで回路図と図面を入手できたので大体どの辺の抵抗を直したら良いのかわかったが、素人がむやみにいじって余計こじらせたらまずいので、そのうちプロショップに持ち込もうと思う。
K師匠によって完調に保たれ、うっとりするようなサウンドの本物デラックスリバーブ。相当数のギターアンプがここに来ては売られていったがこれだけは手放す気になれないと話していた。
デラリバIIと記念写真。同じ大きさかと思ったらIIの方がでかかった。
それからレスポール兄弟のヒビ見せやっこ。
K師匠のレスポールは1971年頃のデラックスで、60年代の良い材木を使ったという印の「Bスタンプ」もの。ぼくのは1957年(レプリカ)Historic Collection(略してヒスコレ)。ピックアップもデラックスは「ミニハム」で、シングルピックアップの座繰りにフィットする。ぼくのは57クラシック(だと思う)。どちらもゴールドトップだが微妙に違う。黄金と赤金。そしてやはり全然音が違う。
ヒスコレ57クラシックは「グイイイイ」とうねる感じがする。小さい音で弾いても生音でもそういう感じがある。ぼくはこれがギブソンの音だと思っている。(おととい久しぶりにストラトを弾いてみたらグィイイイと云う感じがして、そうでもなかった。と思い直しました。)
デラックス・ミニハムはまったく素直。直球。ぼくのヒスコレがちゃんと削った鉛筆だとすれば、ミニハムは丸ペンくらいに尖っていてエッジもはっきりくっきり。最初は「こんなんぼくの求めるギブソンや無い」とひそかに思っていたが、あれこれポロポロ掻き鳴らしてポイ〜〜ンと弾いたある瞬間、うっとりきてしまった。
7フレット5弦のE、ポーーーン♪なんだこれ、この音。静かな池に丸い石を投げ込んだときのような不思議な気持ち。はぁ〜〜〜〜〜〜いいなぁ〜〜〜〜これ〜〜〜〜。
左がデラックス。なんだか向かって左肩の立ち上がりの角度がだいぶ違うように見える。
Bスタンプ・デラックスは新しいレスポールと違ってトップの彫りが深いと聴いていたので、ヒスコレは平坦なのかと思っていたら似たようなもんだった。ヒスコレは一応レプリカなので昔のヤツを真似してちゃんと彫りが深くしてあるようだ。
しかし年々さらに初期物に忠実になってきているので、最近のヒスコレはもっと深いのかも知れない。まあどれだけ忠実になってもオールドにはなれないんだけどな。