おれたちは全国を荒らし回る悪逆非道な盗人グループだった。
ある日、仕事の垢を落とそうと数人でつらつら鄙びた温泉にやってきた。その温泉には駅舎と農家のような建物がぽつんぽつんと寂しくあるくらいで、温泉街のあの建て込んで和洋折衷、建築様式混合の懐かしい安っぽさがなかった。
風呂はというと、丘陵になった見晴らしのいい田畑のあぜ道や畝の脇に、こちらも置き忘れたように一畳ほどの湯船がぽつんぽつんとある。村では七つほど湧いていると自慢だった。透き通ったのと白濁したのが半々。おれはというと着いた日のうちに三つほど入った。
めいめいバラバラになって散策し夜に集まったみんなの意見を総合すると、温泉の中の三つは本物だが、どうやら他の四つは偽物だという結論になり新聞社に訴えることになった。
次の日には、下の街までおりて買い物やら有名店でお茶を飲んだりすることになった。
田畑のあぜ道を通ってみんなでぞろぞろバス停まで歩く。途中、学校の校庭の金網の陰に一つ風呂があったので入った。そしてまたみんなであれこれガヤガヤ話ながら歩いた。
桜の咲いた木が邪魔なバス停でバスを待っていた。
「Tさんは下の町ではどこのお店に行くつもり?」と、Sが聞くので
「おれはクラップっていうお店がいいらしいのでそこに」と答えた。
「あら、一緒にキノマタトンペイに来てくれたら、ポイントがたまるのに。」と言うので
「ぢゃあ、そこに」と答えながら下を向くと、腰に巻いたタオルが取れて下半身が露わになっていた。「え〜〜!」と見ると、みんなバスタオル一枚巻いているっきりの裸の集団だった。オレはもろにSに見られたと思ったが、彼女はポイントがたまる事がうれしくて、見たのか見なかったのか何食わぬ顔でカードのマス目を数えている。
と言うところで猫に起こされた。
見たとか見られたとかで騒ぐような若者ぢゃないけど。