昨日の話。坂を下りはじめのところにミモザが満開。眩しくて目を細めなければならないくらいに光っている。
少し下ったところで、欧羅巴系の少女が登ってくるのにすれ違った。ふたりともすらりとしていて、モデルかしゃん?と思ってしまうほど華やかだったが、連れに後で聞いたら「気がつかなかった」らしい。幽霊だったか?
さらに少し行くとライラックが強く香った。ライラックはリラとも云うのか?この通りは今の季節まるで少女漫画の背景にうってつけに思う。松山俊太郎が加藤郁乎の俳句のライラックになにか批評してたな、そういえば…。
時々眠っている自分から、建物を取り外して空想してみる。暗がりの空気の底の崖の少し横の空間にぽつんと浮いている感じ。鎌倉時代からの怨霊や亡霊や魑魅魍魎が谷間を徘徊していても、それほど悪い気はしない。隣人との距離もある。
都会の建物を取り去って空想してみると、人ひとひと、空中は人でいっぱい。ず〜っと高いところまで雑然と人が配置されていて、距離もうんと近い。ドロドロした情念が人々にまとわりついていてとてもいやらしい感じ。勝手な想像だけど気分悪い。
海と空の境界線が取り払われて見える日は、どこまでもつながっているようで、船で乗り出したら空まで上がって行けそうな気がする。
鹿の角の破片ようなものを拾った。海に鹿はいないので、貝の種類の破片だろうか?断面をみると骨質がハリセンのように薄く折りたたまれている。
持って帰ったら、蟹好きの猫のハルコだけが匂いを嗅いで、手でちょいちょいと遊んでいた。やっぱりこれは蟹の種類だろう。
知人の近況をブログやツイッターで知ると、誰も彼も猛烈に忙しそうにして、すり減らしてヘトヘトになりながら頑張っている。なのに、ぼくは一体どうしたことだろう?用などなにもない。仕事は誰がやってみても同じ結末になるようなことばかり。飛び抜けたとこはなんにもない。
なのにせっかく横組みに置いた文字を、タテにしてくれと無碍に言われてなんだかひどく不快になり、とぼとぼと散歩している。ああめんどくさい。
ら い ら っ く 来 蟹 袴 の 神 ら
加藤郁乎「えくとぷらすま」