電灯のついている部屋で10年ちょっとぼくは寝起きした。その左の窓の中で仕事をした。そのまた左の窓は川田さんの家の窓。数年前に引っ越して空き家になっていたのが、窓が落ちて家の中まで吹きさらし状態になっていた。下町の隅っこのはじっこの隙間の家。
風雨に耐えてよく頑張った。感動した。ところどころ耐えきったとは言い難いけれど!
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猫たちの引っ越しは、人の引っ越しの一日前(11月10日)に決行された。テレキャス師匠のキャンピング仕様の車で三匹運んで貰った。ミノル、リクドウ、コトブキは頼んで、自分の車にアキツケ、ハルコというシフトを組んで引っ越し。自分だけひとりでドライブは寂しいもんね。道中もっとギャーギャーいうかと思ったら、アキツケは車に乗せた途端に石膏像のようになってしまった。ハルコは弱々しくずっと鳴いていた。
みんな、いつもの医者に行く感覚とは違うということを理解していた。どこへ行くのか知らねども、もうここに帰ってこないということを知っているのだった。
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師匠達と食事をして、猫と妻を鎌倉に置いて、一息ついて自分が三ノ輪に戻ったのは、もう今年の酉の市が始まっている時間だった。夜中というのにザウザウと靴の音を引きずったやんごとなき連中が集まってきている。
深夜に明日運び出す物を最終的に箱詰めして、棚を分解したりアレヤコレヤ。でぼくもようやく2時ぐらいにお酉様に出かけた。そぼ降る雨の中どうするか迷ったけれども「かっこめ熊手」を今年の分に交換しておかないとね。てくてく、てくてく夜の下町、龍泉。チョイ寒の小雨の露天には暖を求めて人がいっぱい。
家に戻って、箱の山積みされた部屋。雑多な物を残しながらガランとした部屋。どこで寝ても良いのだが、やっぱり自分の場所で寝た。
明日は一番で力持ちの連中が景気よくやってくる。
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