8月2日雨。
船はゆっくり揺れながら雨の中を進む。風呂に入ると案外眺めが良くて楽しめた。
風呂の水が、船が揺れても水平に残っているのでなんだか荒波に揉まれているようでこれも初めての体験で面白かった。
16時ぐらいに着だったと思う。何しろ日記をつけていなかったので何もかもうろ覚え。
一日甲板に出たり、客室で寝たり。切り抜いてきた「じぱんぐツーリング」という雑誌の0円マップを眺めたり。
大阪から来るSRの相棒N氏はあさって小樽着の予定。
「もう敦賀からのフェリーに乗っただろうか?」とか、考えていたかもしれない。
夕方、室蘭に入港。港でなにやらフェスティバルのような催しをやっていて、そこでホタテを食べたかもしれない。少し腹を満たして登別温泉へ向かった。
登別に着いた時はもう日暮れ19時頃か?
とりあえず立ち寄り湯に入る。出てキャンプ場に急ごうと思っていると無謀な貧乏旅行の若者。「泊まるところがない」とか言っている。お金もないと言っている。ぼくは知りませんよ。雨も降っているし、早くキャンプ場について落ち着きたいのに面倒くさい。
「0円マップ」で調べると近くにライダーハウスがあるようだ。ライダーハウスは超格安、あるいは無料?仲間の絆料金で宿泊させてくれるありがたい宿泊所です。人とのふれあい、情報や交流。そういうのがめんどくさくない人にはうってつけ。
仕方がないので、その少年に「0円マップ」を与えてぼくはキャンプ場への道を急いだ。もう真っ暗!
だ〜〜れも走っていない雨の森の中の道。登別と言えば熊だよな〜。
道は新品で真っ黒。白いラインが道の両側に光っている。センターラインの破線寄りを走る。道の両脇には電柱が頻繁に建っていて、下向きの矢印がうるさいぐらいに光る塗料で反射している。
矢印のところまで道幅があるんだろうねえ?落ちたくないし、お化けも熊も恐い。
XTのヘッドライトは蛍なみですよ。
湖のところで「おっ!」と出てきたバイクとすれ違ってよろけると、キタキツネ!?を見たような気がしながら倶多楽湖が左に見えた。右側がキャンプ場。
20時ぐらい?管理人に料金を払って汗をかきながらテントを張る。
管理人が帰っていくと3張りぐらいのテントが森の中に残された。この日は何を食べたっけ?
テントの前でゴソゴソしていると車が路に停まる。水色の日産パオ。
白い装束の男がせっせと荷物を運んで、ぼくのテントの後ろに設営したようだ。車から押し入れダンスのようなプラケースを運び出してとても手慣れた感じだった。
ここからが怖い。
彼の張ったテントは、ぼくのテントの裏なので見えない。
ぼくは自分のテントの中で飯を食べたり、地図に印を付けたりしていた。すると裏で
喧嘩が始まった。怒鳴り合い?叫び声。
「オマエは、自分の生き方を変えようとしたことがあるのかぁ!!!」
「コームインはいいよなぁ〜〜!税金で旅ができてよぉ〜」
何を言ってるかわかんないところがおっっかねぇ〜〜。よくよく聞くと片方が
一方的に怒鳴りつけているようだ。こっそりテントの陰から顔を出して見てみると、向こうは樹の陰からこっちを睨んでいる。目が合って縮み上がる。ヤツはぼくに向かって叫んでいるのだ。彼の薄ら笑いが焼き付いている。
二人ではなくひとりだとわかった。恐くてテントに引っ込んでチャックを閉めるが、怒号は終わらない。
彼は何かの犯人で警察に追われている。公務員である警察の尾行を警戒している。そういう設定で叫んでいる。ぼくのことを尾行の公安と想定しているらしい。むっちゃこわい。
管理人が帰った後でキャンプ場にくるのは、料金を払わなくてすむというのもあるが、正体を知られないというのが目的だろう。そして上下白っぽい装束というのはオウム以外あり得ないんじゃないの?
などなど考えるとものすごく恐くなったが、体力的にも疲れ果てていたし、とても寒かったので、シュラフにくるまると、叫び声の続く中すぐに眠ってしまいました。