さて、今時めづらしい木製の足場がたったと思ったら、ガタンガタン、ボカ〜ン、バリバリバリとけたたましい。それも四日ほど。やはりなんといってもガラスを割るペチャ〜〜ンという音が、もっとも刺激的。目が覚めます。強度のネボスケ様の目覚まし時計には、この音を使うのが効果的かも知れません。
壊しかけを見ると土壁のしっかりした家でした。うちと交換して欲しいほど頑丈そうです。ぼくの住まわせてもらってる家は半分戦前、半分戦後で、戦後の部分はベニヤとトタンにサンドイッチされた壁の中が中空構造(断熱も何も無し…張りぼて工法とも言う?)なのです。ああもったいない。貧乏人にはなすすべもなく瓦礫と化してしまいました。
ついでにチクチクのとげの立木も哀れ伐採されていました。
まあ、こんな下町の家などどんだけ壊されても、またすぐにマンションが建ったり、ちっこい建て売りになったりします。やっかい事といってもまあ人づきあいぐらいなもので、自然環境が破壊されるとか、そういう大仰なことではありません。心に触れる大事なものが失われるとか、そういった事とは無縁です。
沖縄の普天間にあるアメリカ軍基地の移転先の辺野古というところにはジュゴンがいるそうです。ジュゴンというのは見たことがありませんが、熱川バナナワニ園で淡水マナティは見たことがあります。
孤独で憂鬱なその泳ぐ姿は未だにまぶたに焼き付いています。温室の仮想ジャングルに設えられた小さなプール、緑の苔が生えて鬱蒼とした感じの水の中を2~3メートルの肌色の身体をゆらゆらさせてゆったりと泳いでいました。まだいるのかな?
ひとりっきりで緑の水の宇宙の奥。来る日も来る日も哲学以上の苦しみに親しくしていたに違いありません。動物を孤独にしてしまうのはさびしい。どうか辺野古地区のジュゴンも守ってやって欲しいと思う。ひとりにしないでやってほしい。
と、思っていたら自衛隊が環境調査に乗り出したという話です。反対派の住民が岸辺の小屋で待機していたり、ボートに乗って見回っていたりするのも徒労。戦艦じみた船からボートで繰り出した自衛隊のダイバーが調査用の機器を珊瑚にしっかり打ち付けたのだそうです。
なんで兵隊さんが?どこの土木事務所に頼んだら兵隊さんが来てくれるんだろう?誰でもみんな頼みたい、そう思うよね。
そして夕方「珊瑚に杭を打ち込んだ。」という記事をどこかで見たような気がしましたが見つかりません。
以前、新聞の記者が「珊瑚に落書きをして、記事を捏造した」時の大騒動とはどうしてこうも扱いが違うんだろ?
あの後、地元のWさんは「ほっておきゃすぐ元に戻るよ」って言っていた。今回はどうせつぶす海の珊瑚だから大きなニュースにならないのかな?
自衛隊はコネのある人たちの道具ですから、大衆に害をなしても仕方ない。これが軍隊になるというんだから大変なことですよ。戦車の前で止まれなんて言っても、止まっちゃくれませんからね。
政治家が戦車をぬいぐるみで作ってくれるようになるまで、貧乏でコネのないぼくのようなのは逃げまわんなくちゃなんないんです。出口のない苔生したプールの暗い空間を、毎日逃げなくちゃ。