アルファロメオ156。1998年ぐらいに発表されたクルマなので日本式に云えば15年落ち?保険屋的に云えば価値のないクルマ。だけどほら、なかなかカッコいい。日本人のデザインにはないおおらかさがある。
この取っ手、素晴らしいでしょ。
デザインていうのは「飾る」ことではありません。飾ったり色を変えて派手にしたり変わった形にしたりすることではありません。もののもつ意味の形を強めることです。ですから生物における自然界のデザインに勝てるデザインはありません。自然がああいう立派なものを作り上げているのですからせめて人は工業製品においてはデザインをがんばらねばなりません。
このクルマで残念だったのはサイドスカートと呼ばれる部分。クルマの下側が風を巻き込まないような張り出しているけど、ノーマルはドアの丸い曲線がクルマの下へ吸い込まれるようになっていて、ベッドに寝そべる女性や波打ち際のトドの下腹部のような美しさがスポイルされちゃってる。何度か外そうと思ったけど、どうも何カ所か穴が開けられているらしいし、色も焼け残っているようだ。
それから顔。顔は大事。この頃、日本の車には顔が見えないのが多い。そうでなければやたらに他車を威嚇するような感じの顔。残念この上ない。
ダイハツ・オプティほど可愛くなくてもいいけど、愛嬌がある方がいいよね。最近
フェラーリも笑ってる。
このクルマも後期はジウジァーロが顔を変えてしまって、なかなかユニークなロンパリな目つきが直されてしまった。
2.5LのV型6気筒エンジン。6ッ個のピストンがゴンゴン頑張るので燃費が悪い。来年の車検ではタイミングベルトなどの交換も同時に予定され経済的に相当な打撃が予定されたので維持をあきらめることになった。
気持ちの良い廻転域までエンジンを廻すと覆面パトカーに対する心理的な不安が大きくなり、(イタリアンなチョイ悪オヤジ的精神で乗り切れない小心者のわたしは)結局プラマイ0に近い感覚になってしまう。
運転している間は、(以前にも書いたけれども)適度な緊張感のある気持ちよさに包まれて一度も眠くなったことがなかった。145の時はすごく静かになったダンロップのタイヤがなぜだがずっと不快なゴォ〜〜という音を出すのが気に入らないが、エンジンの音は素晴らしい。そしてなんか運転していて楽しい。
室内は簡素。イタリアの車はすぐにデザインとか云う話になるけれど豪華さはない。いたって地味なたおやかな曲線にあふれている。メーターが奥深いところにあるので助手席からスピードが読めなくて苦情が出た。
レザーシートはまあまあ。比べるなら145の布のシートの方がお尻が痛くならなかった。
あんまり遠くへ連れて行ってやらなかったのが心残り。鎌倉からは東京を経由しなければならないので関越や東北へ出るのに気分が重くなるのだ。だけどこれでいっぱい乗って陸前高田へ行った。楽器も満載でバンドを乗せてった。四人乗っても高速では燃費が悪くならなかった。ひとりでちまちま都会を走る方が燃費が悪い。
いろいろ擦って傷だらけにしてしまった。仏滅の日に納車だったせいにしているけれど、けっこう自分では凹んでいる。
鄙びた漁港の片隅をノロノロ進んでいたら猫に囲まれ進めなくなってしまったので、そこで停車して写真を撮った。猫にもこのクルマの良さがわかるのだな。サイコーだぜ。