使っていないボロボロの手帖を気まぐれに開いてみたら昔の旅の記録が残っていた。それがオートバイの距離計と給油量、それから時間ばかり。感想も何も書いてない。どこを通ったとか記号程度。日付もない。
なにより写真をスキャンしながら「こんな所を通ったか?」とまったく記憶もおぼろげ。これをブログに上げても意味がないなと思いつつ、まあ自分の手帖整理ということで。出来事もほぼ思い出せぬまま、色褪せたまずい写真の羅列にてさらっと置いておこう。
〈メモ帳〉
家 11929 8:00
那須 12141 15:11(給油7.8L, 258KM走)
多分矢板インターの写真。お盆だったので路肩にまで車が溢れていた。
1986年当時、まだ首都高が浦和に届いてなかったので下道で行った。三軒茶屋から三郷を抜ける道。地図を頼りに暑いさなか高速に乗る頃はもうヘトヘトだった。インパラは小さいけれども排気量が175ccあるので高速も走れる。175ccという排気量は実にリーズナブルで良かった。
どこで高速を下りたか那須高原を目指し、宿泊はなかでも一番鄙びた名湯・北温泉。ここは宿よりずっと上の方でバイクを降り、凸凹の坂道を荷物を担いで2~300メートル(もっと?)歩いた。そういう対象との距離の縮め方が秘湯に向かっているという気持ちを高めてくれてうれしくなった。
広い温泉プール!
天狗のお面で気分が盛り上がる
木造三階建てとか、建て増しで内部の繋がりがヘンテコになったあげく迷路状になってるような古びた建物が大好き。ギリギリで予約したので窓を開けると崖の湿ったような薄暗い部屋だったが、温泉がよいので大満足。
日本の民間に伝わるプリミティブな風俗が隅々に浸透しているような闇がある。つげ義春の漫画に感じられる膨らみや奥行きを身体中に体験できて幸せだった。ぼくにとっての温泉行きとはすべからく常にそういうものであるべきだと思っていた頃のひととき。