スペースが出来たのでようやく分解にこぎつけた我が家のボロ家具。組み立て式のこれは使い始めて半年もしないうちに棚が現状のように落ちて、以来約一年、動かすこともままならずそこに置かれたままだった。
ようやくこれを買ってきたときのように分解し捨てに行くことが出来るというのは、何やら晴れがましい喜びに感じられるのだった。と同時にバカヤローと心の中でえんえんとこだまし続ける何かがあったのでした。
つまり、見栄えだけの安物で家の片付けを済まそうとした自分が悪い。
けちったツケが廻ってきた。安物買いの銭失いとはこのことだ。
そしてネジを外す。組み立てが簡単なら解体も簡単なのだ。するとあろうことか棚板の部品がポロポロと剥がれてくる。「ボール紙ハニカム」構造なのは知っていたけれどもこれほどまでに接着が脆くては強度が出るわけがない。
コレハアカンヤロ!
「ハニカム」というのは蜂の巣状の素材をサンドイッチして剛性を出す手法で、多分飛行機や建築などにも多く使われている信頼できるものだと思う。しかしそれはサンドイッチ素材(棚板の場合はベニヤ板)を堅牢に接着してあるからこその強度ではないのかしらん?
以前、DUCATIのレーシングマシンにBRAINチームが使用したのがアルミハニカム素材のフレームで、非常に軽量で剛性が高いという評判だった。ドライカーボンのシートフレームとスラントしたカウル、全体のデザインも見事で実際に2度ほどレースで見てかっこの良さに痺れた。このレーサーのフレームのアルミの溶接の見事さたるや!
一個一個部品を確認していくと接着剤の形跡の無いところがあったり無茶苦茶。量産品とはいえボンドがまったくしみてない。不手際なおんぼろロボットがチューチューいい加減な仕事をしているのだろうか?北欧のおばさんがスルメでも嚙みながらやってんだろうか?
ここに来てはっきり断言できる、これはまごう事なき粗悪品だった。
汗だくになって車に積み込み、クーラーの壊れた車で粗大ゴミ処理場へ運び込む。
「製品を自分で解体して持ってきた、ということで、これは全部で100円!」
親切なおじさんの言葉。最低でも600円はかかると思っていた。ラッキー!
100円払って、廃木材の奈落へポイポイ投げ込んでおしまい。
午後からホームセンターへ猫のトイレ砂など買いに出た。帰りに江ノ島から海沿いの国道を通ると良い波が来ている。こういう時はやったことのないサーフィンをやりたくなる。暮れなずむ海に黒い影が大きくなりついにその先端が白く破れると、水平線近い陽光のなんともいえない赤い光線に浮かび上がる。
暗がりに沈みかけた海を幾筋もの赤い波濤の船団が押し寄せてくる。ニュースで見た台風が発生している影響だろうか。
渋滞の車内から見ていたら、波が盛り上がる。待ち受けているサーファー達。
「それ!そこだ!」
「ゴー!ゴー!」
「乗った〜〜!」
「ウワ〜〜巻かれた〜〜〜!」
などなどひとり車の中で脇見しながら大騒ぎ。七里ヶ浜沿道のサーフィンショップから暗い海を撮影している人たちがいて、「行け〜〜!」「乗った〜〜!」「やった〜〜!!」と同じことを言って騒いでいる。友だちが乗っているのかな?そういうものだよな。
やっぱ、サーフィン、やらなかんな。